海外で働きたい。業界や職種職業、国から良い選択肢と方法を考える

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就職活動をしている学生さんや社会に出て数年経って次のステップを考えている社会人の方の中には、海外で働いてみたいと感じている人も多くいると思います。

今回は外務省が毎年出している『海外在留邦人数調査統計』や海外売上比率の高い大手企業のランキング、そして実際に出ている海外の求人情報から、下記の点について考えてみます。
・どのくらいの日本人が海外で働いているのか
・海外で働いている日本人の、地域別・職業別・業界別の割合はどうか
・海外で働く方法はどのようなものが考えられるのか
・現実的に海外で働くために就活から考えてどのような戦略が望ましいか

海外で働く日本人の全体感

外務省の『平成27年度 海外在留邦人数調査統計』によると海外在留邦人、つまり海外に住んでいる日本人の人数は約129万人とされています。
日本人の人口は1億2616万なので、大体100人に1人くらいの日本人はこの小さい島国の外で暮らしていることになります。

ただ、この数字には永住者、つまり海外に移り住んで永住権を取得してずっとその国で暮らしていくつもりの人。そして長期滞在者、つまりある程度海外に住んでもその後日本に帰ってくるつもりの人が含まれています。今回は今日本で働いているけど今後海外で働きたいという方向けに書いているので、より現実的な長期滞在者に絞って数字を見ていきます。

長期滞在者数は、現在約83万人です。
この中には仕事で赴任している人の奥さんや、そのお子さんなんかも計算に入ってきます。
長期滞在者の方々がどんな仕事で海外に行っているのか、もしくはどこに行っているのかなど、つっこんで見てみたいと思います。




国・形態で分けて見る

『海外在留邦人数調査統計』をもう少し細かく見てみます。

海外で暮らす日本人の増加率

海外で長期滞在をしている日本人は現在約83万人ですが、この数字を過去10年にわたって遡るとこのようなグラフになります。

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平成17年が70万人くらいなので、ここ10年で19%くらい増えています。
最近の若者は内向的で海外に行かなくなってきたとか言われていますが、全体的に見るとやはり増えているようです。

男女比と年齢

続いて、性別・年代別の人数を見てみます。(※この数字は永住者も含んでいます)

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男女共に大きなボリュームを占めているのは30代・40代のゾーンですね。逆に20代は少ないのが見て取れます。日本の人口全体的に考えると、もちろん20代は30代40代と比較すると割合は低いですが、このグラフでは特に女性などは2倍程の差があるので、若いうちよりもある程度大人になってからの方が海外で暮らす率が高いようです。
この後のグラフで見ますが、海外で暮らす日本人の多くは民間企業で働く方々です。そのため、ある程度キャリアを積んでから海外のポストにつくケースが多いと考えられます。当たり前ですが企業が海外に進出したりビジネスを拡大する場合、大きなリスクの割にはリソースをあまり割けないという問題が出てきます。そういった場合、比較的経験を積んでいて体力もある30代40代が抜擢されやすいのだと思います。

長期滞在者はどんな人か

上でちらっと触れましたが、今度は地域ごとにどんな形態・目的で暮らしているかを見てみます。

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日本人が多く住む地域はアジア・北米・ヨーロッパの順になります。
渡航の形態としては、全体で見ると民間企業の社員としてが一番多いですね。また、アメリカやカナダへは他の地域よりも留学目的で渡航する方が多く、中南米・東欧・旧ソ連・中東・アフリカなどはそもそもの絶対数がかなり少ないです。ちょっと潰れてしまって見れないのですが、こういったあまり日本人が行っていない地域では政府機関で働く目的で渡航する方の割合が高いです。これらの地域の中でピンポイントで行きたい国がある場合は、一般的な民間企業の社員という形以外を探すのも良いかもしれません。

長期滞在者数を国別に見るとこんな感じです。

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アメリカ、中国、タイ、英国、オーストラリア…と続きます。
この中で見ると、タイやシンガポールは人口の割に多くの日本人が住んでいるように感じます。
永住者の場合だとこの順番が結構変わってくるのですが、多くの日系企業が進出している国はその分長期滞在者数も多いようです。

地域別・国別の企業数

では、もう少し具体的にどの地域や国に多くの日系企業が進出しているかを見てみます。
地域的に見るとこちら。

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続いて国別に見るとこちら。

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ついでに、進出している日系企業数の推移を数が多い国から順に並べると下記のような感じです。(アメリカと中国はかなり多いので、グラフからは除いています)

workabroad_companiesbase

こうして見ると、アジアに多くの日系企業が進出しているということがわかります。米国・英国・オーストラリア・フランスなどは長期滞在者数が多いわりに日系企業数が少ないので、

■北米・ヨーロッパ:大手企業・大企業が規模の大きな拠点を構え、それぞれ多くの日本人が現地に行っている。
■アジア     :中小企業が多く進出し、それぞれ少しの日本人が現地に行っている。

という傾向があると考えられます。アジアは中小企業が多いと考えると、やはりアジアへの進出は日系企業にとって比較的やりやすいようです。




上場企業サンプルから業界で分けて見る

ここまでで民間企業の社員として働く形態が海外長期滞在のうちで一番大きな割合を占めていることがわかりました。
まあ普通に考えるとそうだろーなという感じなのですが、改めて全体感を数字でつかむと個人的にはかなり納得感があります。

では、どのような民間企業だと海外で働くチャンスが大きいのでしょうか。
2014年度に東洋経済者が行った上場企業海外売上比率ランキングから全体の傾向を掴みたいと思います。このランキングは連結売上見込が100億円を超えるいわゆる大手企業のうち、海外売上比率が80%を超える会社をリストアップしたものです。今回はこのリストに業界や従業員数を加え、下記のようなリストを作ってみました。

スクリーンショット 2016-03-22 22.44.04

おおお、結構名前を聞いたことが無いような知られざるグローバルジャパニーズカンパニーがあるようです。こういった大企業の皆さんが、貴重な外貨を獲得してくれています。ありがたいことです。

業界の軸もあるので、この62社の業界別の割合も見てみます。

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これが上記62社を業界別に分けた円グラフです。このうち上記電気機器から化学までは製造業・メーカーと考えられるので、約85%はメーカーが占めていることになります。これらのメーカーは海外に工場や営業拠点を多数持ち、それらを連結子会社としてグループ経営を行っているケースが多いです。

これは単純に企業数での割合なので、従業員数を考慮していません。なので試しに連結従業員数が10000人を超える企業のみでランク付けしてみました。

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それがこのグラフです。連結、つまり全世界で国籍関係なく働いている従業員数で並べています。大分乱暴ではありますが、この数字が大きい方が海外で働くポストの数も比例して多くなると考えると、大手企業かつ従業員も多い企業はほぼメーカーと見て取れます。一社だけメーカー以外でランクインしている郵船ロジスティクスがありますが(赤い線で示している企業です)、それでも圧倒的にメーカーが占めています。

よく、海外で働くチャンスが大きい業界として、総合商社・海運・航空などが挙げられますが、そういった企業は有名な企業こそ多いですが、現実的に採用されるかと考えると、絶対数的に難しいように感じます。そのため、海外で働きたい場合はメーカー、出来れば大手メーカー、ダメなら無名だが海外比率の高いメーカーを狙う、という方法論がひとつありだと思います。

ちなみにこれらの企業を平均年収の高い順に並べて何か傾向が無いか見てみましたが、そもそも絶対数がメーカーに寄っていることもあり、まちまちな感じで特に顕著な点は見い出せませんでした。求人情報に応募する前にご自分で調べてみてください。




求人情報サンプルから業界・職種で分けて見る

さて、ここまでは大手企業で海外比率の高い企業にフォーカスしてみました。日本の大手企業は比較的新卒で採用して育て上げる、という文化が強く、転職活動でこういった企業に採用されるのは結構難しいと思います。いくつかの企業のHPから中途採用が無いか探してみましたが、大体の企業は募集していても『若干数』といった表記でした。さらに、中途で採用されてもすぐに望みの海外勤務につける保証はありません。

転職をして海外で働きたいという場合には、現地で募集している求人情報に応募するという方法があります。これは日系の企業などが現地で働ける日本人を探しているものなので、採用と海外勤務が直結している、どうしても海外ですぐに働きたい場合は最も手っ取り早い方法です。

そういった現地での募集内容のうち、どのような業種や職種なら海外で働く可能性が高いかを考えたいと思います。

そのために、最後に日本人向けに出されていて海外で働くことが前提の求人情報を見ていきます。

シンガポールの求人情報をサンプルにする

といっても全世界の求人情報を見るわけにはいかないので、個別の国に絞ります。さっきのデータから、北米・ヨーロッパとアジアでは傾向が異なるようなので、アジアではありながら北米っぽい求人が多いと考えられる(工場勤務などよりもオフィスワークが多そうな)シンガポールの求人情報を見てみます。

現在公開されているシンガポール国内での求人情報をwebから頑張って集めるたら、全部で1924件に登りました。EXCELにまとめた一部を切り取るとこんな感じです。

スクリーンショット 2016-03-22 01.23.48

それぞれ雇用形態・業界・職種・月額給与(シンガポールドル)があるので、これらの視点を掛けあわせていろいろ考察してみます。

業界別割合と給与水準

まず、シンガポールの求人を業界別に分けるとどの業界が多いのかを見てみます。それがこの円グラフです。

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メーカー、IT・通信、サービスで半数ほどを占めています。シンガポールではお国柄ITと金融が経済の大きな割合を占めていることを考えても、やはりメーカーからの求人は多いようですね。次に給与水準を見てみます。

workabroad_industrysalary

こちら、少しわかりにくいのですが、求人数の多い上位の業界毎の求人情報内の提示給与をまとめたものです。求人情報には提示額が◯◯ドル〜◯◯ドル、と記載されているものがあるので、それぞれ低い額と高い額の中央値をとっています。(最低額◯◯ドル や およそ◯◯ドル といった表記のものは除いています。それでもそれぞれ数十〜数百のサンプル数にはなっているので、ある程度信頼できる数字だと考えています)

これを見ると、最低提示月額では金融・保険業界が大体4000ドルと一番高く、物流業界は3000ドルと一番安いです。
最高提示月額ですと、金融・保険業界、メーカー、物流・レジャーなどが5000ドルと高水準に推移しています。このデータだとあまり差がありませんが、実際はシンガポールでは金融業界が高給取りということになっています。

職種別割合と給与水準

次に、職種別求人数の割合を見てみます。

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営業・販売、秘書・事務、カスタマーサービスで半数を超えています。この辺りの職種は特別シンガポールだからというわけではないと思いますので、他のアジアの国や北米などでも営業系や事務系、顧客対応系の職種は比較的求人数が多いと考えています。

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職種別に給与水準を見てみると、このような感じになります。
給与水準が高い職種は、技術・開発・QC、マーケティングについで営業・販売が続きます。逆に求人数の多い秘書・事務、カスタマーサービスはどちらかと言うと低い水準のようです。

給与的にはやはり専門的な技能を持っている職種が高く、業界はそこまで大きく差をつける要因ではないということがわかりました。
海外の現地で募集されている求人に応募する際には、なるべく自分のスキルとしての強みがあったほうが有利ですね。そりゃそうなのですが。

給与をあまり気にしないとすると、やはりメーカーの求人が多く、仕事内容も選ばなければ事務的な仕事などの求人は結構ある様子、つまり海外で働く方法は多いみたいです。総合するとメーカーの営業事務などは、どこでも需要がありそうです。
今回はシンガポールに限定したサンプルなので、どうしても偏りが出てしまっていると思います。今度国別で一覧を作りたい、、大変そうですが。




まとめ:海外で働くための全体戦略

ここまでの内容を元に、僕なりに海外で働くための戦略を立ててみます。

新卒採用時

新卒採用は、国内においては大手企業に一番入りやすいタイミングだと一般的に言われています。そのため、ここでは(普通に就職という道を選ぶのなら)大手企業、特に海外比率の高い大手メーカー、そして大穴狙いの商社や海運、航空会社も取りあえず受けます。そしてこれらの本命がうまくいかなかった場合、世間的にはそこまで有名ではないけど海外比率が恐ろしく高いメーカー郡を受けます。

新卒入社後の20代

海外で働くチャンスが30代・40代で巡ってくると考えると、新卒で入社した会社での20代は海外で働くための下積みと捉え、後に海外赴任することを目的に海外赴任の多い部門部署との関係強化や自身の海外キャラの確立に励みます。具体的には海外事業部やグローバル営業本部など海外で働けそうな部門の偉い人にはそれとなくアピールをしたり、ちょっと英語でメールを作らないといけなかったり資料を作る必要があれば、率先して引き受けます。もちろん将来的に海外で働きたいという旨は上司や人事にしっかりアピールしておき、うずうずしながらも頑張って栄転の辞令を待ちます。

栄転の30代40代

経験を重ね、海外キャラも確立出来るとようやく海外勤務への切符が回ってきます。30代40代にもなると結婚し育児をしているタイミングだったりすると思いますが、大企業の海外赴任であれば家がついていたり赴任手当があったりするので、家族の理解さえあればそこまで大きなハードルにはならないかと思います。

20代で望み薄な場合

そして、もし海外勤務が望み薄な場合、思い切った海外転職という道を模索します。
新卒で入社した企業の海外比率が低かったり、海外キャラブランディングに失敗した場合、海外に強い転職エージェントのサイトなどから情報収集を始めます。また、海外で就職する場合、英語はもちろんですがそれ以上に何か専門的な知識があると強いです。マーケティングなどの専門的な分野に興味があれば、独学で勉強します。海外では基本的に多くの人材を一度に採用することが難しいので、実務経験はなくても独学で勉強した知識は日本国内の転職よりも重視されやすいと思います。

以上、完全に個人的な意見ですが海外勤務への戦略を立ててみました。
今回は色々なデータをこねくり回して検討したので、自分としても新しい発見とかがあって面白かったです。皆さんが海外で働く助けに少しでもなれば嬉しいです。

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